前回の記事では、SFA(営業支援システムツール)を導入することで契約率・受注率に差が生まれるということをお伝えいたしました。
確かに、この営業支援システムツールをしっかりと活用することが出来れば、提案時期などのタイミングを見落とすことなく、お客様の反応や次なる営業アクションをどのようにしていくのかなどを考えることが出来ると思います。
その他、営業活動の効率化(契約までの営業の成功要因を体系化)や、営業ノウハウ(営業ツールや営業トークなど)の蓄積、人材育成を体系化でき、教育コストの削減につながったり、導入する事で様々なメリットがあります。ですが、なかなか活用するまでに至らない、定着しないことがあります。
非常に便利なツールではありますが、導入したからといって必ずしも営業力が強化されたり、契約率が改善されたりするわけではないということです。ダイエットを例にあげますが、いくら良い商品を購入したとしても、継続しなかったり、適切に使用せず効果が出ないからといってやめてしまい、結果的に痩せずただ無駄なお金を使ってしまったのと同じで、SFAも「せっかくSFAを導入したのに効果が出ずにやめてしまった、現場が一切使ってくれず、無駄な投資になってしまった」という導入しただけの工務店様が多いことも事実です。
ですから、素晴らしいツールにも関わらず活用しない、定着しないというのには必ず理由があります。今回は、定着しない落とし穴をお伝えさせて頂き、導入前にしておかなければならないポイントなどをお伝えしていければと思います。
定着しない落とし穴とは?
① 導入目的がわからないからやる気が起きない
基本的に定着しない一番の部分が「導入目的」です。なぜ、新たな仕組みを導入しなければならないのか、営業の行動や進捗の管理されるのではないかなど、SFAを導入した目的が明確でないと定着しないのが現状です。
- SFAを導入することによりどのような成果につながるのか
- 会社は何を目的に行うのか
- このツールを使う方の課題を解決できるものなのか
など、事前に意義や目的を共有しておかないと、営業は“やらされている”と感じ積極的に入力しなくなってしまいます。ですので、導入前に必ず、目的や会社の方向性、会社の課題、営業の課題などを共有しておきましょう。
②「営業や案件管理はされたくない」と拒む?
基本的には皆、「管理されることが好きではない」という部分に突き当たると思います。トップ営業マンであればあるほど管理されることを嫌います。それはなぜかというと、自分の成績のために、今まで様々な人脈を駆使し、いろいろな営業手法を試し、売上成績をどのようにしてUPさせていくのかを必死に考えてきたことを、全てオープンにし、情報を共有しなさいと会社からの命令になるからです。
ですから、必ずしも営業にとって最強のツールになると考えることはできないということが言えます。これからの会社の未来に向けて協力してもらえるように、会社の方向性、目的を明確にし、営業の協力を仰ぎ、SFAの導入に踏み切ることが大切です。
③営業のコアタイムを圧縮してしまう?
SFAを導入すると必ず必要になるのが「顧客情報の蓄積」です。ただ単にお客様の情報を入力するだけでなく、お客様とのやりとり内容などを蓄積していかなければなりません。営業は移動しながら携帯電話などを使ってお客様と話をしたり、お客様との打ち合わせで夜遅くになってしまい直帰する事もあります。さらにお客様の情報を入力することに時間を費やすことになってしまい、コアタイムを圧縮してしまいます。
ですが、この顧客情報の蓄積こそ、工務店様がしっかり取り組むことで契約受注の成功要因や失注要因を把握していくことができるようになるのです。「入力時間」だけを抜き取って考えるのではなく、あくまでも目的である「営業の体系化と契約受注増」という点に立ち戻り、この素晴らしいSFAを定着させていくことが大切です。
④多機能すぎて機能が分かりにくい。使い方がわからない
SFAを導入しても入力作業が大変すぎて営業活動に支障をきたす場合や、機能自体がわかりづらく、使いこなすことをせずに入力をやめてしまうということがあります。SFAは営業担当者が使用することになるため、機能がわかりにくかったり、入力に手間がかかり、時間がかかりすぎてしまうようなものではいけません。入力業務が営業活動の足を引っ張ってしまっては本来の目的が果たせていないと言えるでしょう。ですから、営業の方が、入力しやすいツールを選ぶことも重要ですし、高機能なSFAを導入しても機能を使いこなすことができないまま放置されるくらいなら、シンプルでわかりやすいSFAを導入したほうが無難といえるでしょう。
導入を成功させるポイントとは?
目的や課題を明確にすること
まず初めに現在、営業としてどのような課題があるのかを明確にする必要があります。
- 営業活動が属人化してしまっている
- 受注率が低いため、受注までの体系化ができていない
- お客様に適切な対応が出来ていない
など課題が必ずあるはずです。
営業の課題を明確にしないまま営業担当者に「SFAを導入するから使え」と指示しても、活用されないことは明らかです。まずは、社内で統率された「この課題を解決したいからSFAを導入する」という導入目的を持つことが大切です。
導入後のワークフローを整理しておく
SFAをスムーズに導入するためには、導入後のワークフローを整えておくことがとても大切です。ワークフローが曖昧なまま運用をスタートさせると、営業チーム内で、そもそも何をしていいのかが不明なまま定着しないのが現状です。
例えば、
- アポイント獲得から契約や失注にいたるまでのワークフローを整えておく
- 顧客情報や営業情報の記入漏れなどが発生しないようにどのような情報をどのタイミングで記載するのかなどを明確に決めておく
- 入力業務について「いつ、誰が、何のデータを、どこに、どのように入力するのか」を決めておくこと
などを明確に決めておくと、スムーズな導入を行うことができ、また、導入後の定着率を大きく向上させることができるのです。
サポート体制がしっかりしているツールを選ぶ
SFAを導入した場合、目的に沿って適切に活用できるようにしなければなりません。機能を使いこなすことができなかったり、そもそも、何ができるのか全くわからないことにより高性能のSFAを導入しても使いこなすことができず活用に至らないことが多くあります。ですからSFAの導入サポートを手厚くおこなっている会社様と手を組み、導入していくことが大切です。また、システムのトラブルや自社では解決できない問題が起きた時、すぐに対応できなければ営業活動に大きな影響を及ぼしてしまいますので、そのためにも、迅速にサポートを受けられるようなSFAを選定していく必要があります。
長期的な運用を念頭に置く
SFAを導入してすぐに成果が現れたという工務店様は少ないと思います。営業活動を効率化させていくということは、はっきり言って「そう簡単ではない」からです。
このロジックが適正だと思って活用していても、いざ活用してみたら全く使えないというケースもありますので、SFAを長期的な視点で運用していくということを念頭に置いておく必要があります。
また、SFAは無料ではありませんので、月額費用や年額費用が長期的にかかってきます。中長期的な費用対効果を見据え、運用費用がどのくらい必要になってくるのかなども把握しておくことが大切です。
最後に
定着しにくいSFAではありますが、商談開始から受注までのプロセス(流れ)をデータベース化することによって次なる営業人材の育成や、会社としての営業の体系化ができ、「営業活動の効率化」や「生産性の向上」につながることは間違いありません。
これから更なる競合他社との差別化を図る上で、中長期的な視点を持ち、人材育成の体系化を視野に入れた取り組みを行っていただくことをお勧めいたします。