投稿日
2021.04.09
カテゴリー
ブログ記事
ライター
岡田雅陽
工務店のみなさん、差別化戦略って出来ますか?「答え探しの旅に出よう。」
あらゆるマーケティング系の記事を題材に、工務店のみなさんにとってシンプルで明朗な「マーケティングの答え」を自分なりに導き出す。そんな『自分探しの旅』的コラム

その差別化、同質化していませんか?

工務店向けの勉強会やセミナーに参加すると、様々なところで「差別化が大事」って言葉を耳にしませんか?
僕自身、クライアントとなる工務店のウェブサイトの設計や企画を行う時、ネット広告のクリエイティブを考える時、その会社の強みや特徴にフォーカスしますし、皆さんも大なり小なりそのような強みや特徴を考慮して差別化を図っていることと思います。

では、皆さんに質問です。
御社の差別化の要素って何でしょうか?

デザイン・設計・自然素材・木へのこだわり・耐震・断熱気密性能・アフターフォロー…

んん?
どれも工務店のウェブサイト上でよく見る項目になってしまいました。(笑)
そうです。実はみなさんが考える差別化は、他社も同じように取り組むことで同質化され、差別化として機能していないケースもあるのです。

今回ご紹介するのは、そういった差別化戦略に対する同質化という問題について考察されたブログ記事です。

なぜ、マーケティング戦略における「差別化」だけではリーダー企業に勝てないのか?

参考記事:https://accuent.jp/consensus-building-marketing

記事の中ではこのように書かれています。(以下、記事抜粋)

例えば、チャレンジャー企業が「ドライビール」を出して差別化してきたら、リーダー企業も「ドライビール」を発売することで「同質化」するということだ。
そのため、多くのチャレンジャー企業は差別化に躍起になる。しかし、多くの場合チャレンジャー企業の「差別化戦略」はリーダー企業の「同質化」によって勢いを失うものだ。なぜなら、「模倣されない差別化になっていない」からだ。多くの場合、リーダー企業は多くの差別化戦略に対して同質化によって対応が可能だ。言い方を変えれば、「模倣されない差別化」は現実的には達成が非常に難しいのだ。

これは工務店の世界でも同じことが起こり得ていると考えられます。
 
ある工務店が高気密・高断熱にこだわった家づくりで差別化を図る。しかし、あとから地域一番店も高気密・高断熱を謳った住宅プランをウェブサイト上に掲載。そしていつのまにか、他社でも高気密・高断熱を謳いだす。
この時点で、断熱性能や気密性能で多少の差があっても同質化してしまう…

いかがでしょう。
自分たちでは差別化を行っていたつもりが、消費者から見た時に同質化していて明確な強みとして認識されなくなってしまう。
こうなってしまうと、次に待つのはライバルとの価格競争かもしれません。そして、価格競争に圧倒的に強いのはリーダー企業だとも記述されています。

とある差別化の成功例

こう書いてしまうと、八方ふさがりに思えるかもしれません(汗)

ここでいったん、落ち着いて紹介記事を読み進めてみましょう。
アスクルとカウネットを題材にリーダー企業にチャレンジ企業が勝ったパターンが考察されています。

以下に記事内の要点を抽出させていただきます。


・コクヨがアスクル事業の「同質化」のために開始した「カウネット」はアスクルに3年遅れをとる
・この3年の遅れはあきらかな失策
・優良な卸企業や小売店への配慮を考慮しすぎたことで社内調整が難しかったことが遅れの要因では?
・実際にカウネットがスタートできたのはアスクルを脅威として実感できたタイミングでは?
・コクヨの「カウネット」は卸と小売り店の両方を協力者として取り込む構造を採用しているため、アスクルに比べ高コストになってしまう

つまり、アスクルがコクヨのカウネットに勝ったというよりも、カウネット側の既存ビジネスへの配慮(事情)から来る意思決定の遅れと、コスト増な仕組みによる失策と考察されています。

そのうえで、チャレンジャー企業の差別化戦略が、リーダー企業の社内合意形成にどのような影響を与えるかを検討することも重要なファクターだと述べています。

では、これらを踏まえて工務店の皆さまがどのような差別化戦略を行うべきか?
ここからは、僕なりの「答え探し」を行っていこうと思います。

工務店の差別化戦略①継続はチカラなり

ハード面ではなく、ソフト面で差別化を図ろう!
正直、機能や性能といったハード面での差別化はすぐに同質化されてしまう可能性が高い。取り扱うメーカーや構法の違いはあれど、家づくりにおける安全や快適というキーワードにおいて性能面は絶えず向上されているので、どんなにこだわりを前面に出そうが、「他の工務店と何が違うの?」と消費者が感じてしまう点はかなり多いと感じます。

ただし、ソフト面は会社によりかなり差別化が可能だと感じます。

  • 自分の感性を大事に、家づくりと向き合う日々をブログに書き続ける建築士コラム
  • 初めての出会いからお引き渡しまで、家づくりの背景にまでフォーカスし、まるでその家族の物語の語り手のように記録する広報担当者の家づくりブログ
  • 大工仕事を一つ一つ丁寧にYoutubeにアップするユーチューバーさながらの棟梁
  • プロのカメラマンでは表現できない、等身大の住まいのスナップショットをSNSに投稿し続けるプランナー

「Youtube・SNS・ブログ」とツールはどれも同質化されているけれど、その人しかできない情報発信、その人しか伝えられない感性や視点、そもそもみんな分かっていても継続できない。広告媒体としか扱えない。

地域一番の工務店が大きければそれだけ営業マンが数字を作るわけですから、ハード面では充実していてもソフト面での差別化までは対応できない。社内で方針が出たとしても継続できない。でも、消費者目線でとらえた時、このソフト面の継続性こそが、工務店選びの重要な要素の一つであると僕は考えます。

工務店の差別化戦略②ココロウゴカス

ハード面での差別化ならズバリ「心をうごかすデザイン」

ここまで工務店の差別化戦略は、ハードではなくソフトとお伝えしてきました。
しかし、ハード面でも差別化できる要素はあります。

それはズバリ「デザイン」だと考えます。

しかも、都市部よりも地方の方がよりこの要素で差別化できるとまで考えます。
シンプルなデザインやカジュアルなライフスタイルをテーマに規格化された住宅商品なども増え、いまやある程度の工務店であればどこの住まいもとてもお洒落で素敵なデザインばかりです。

ここまでいうと、むしろデザインは同質化されやすい要素、と思われるかもしれませんが、ウェブサイト制作に携わり、多くの工務店の集客支援に関わるなかで、やはりデザインの持つ力は強力だと痛感しております。

では、どのようなデザインが差別化に有効なのでしょう?
今までの経験を通して感じてきた所感ではありますが、紹介させていただきます。

・ハイセンスだけど、無機質すぎてあまりにも機能的に感じられない家は受けが悪い
・ハイセンスなのは事実だけど、好き嫌いがはっきりしそうな住まいは層が限られる
・理想は建てるかどうかは別として、誰が見ても「素敵」と感じるデザイン
・こんな家に住んでみたい。と消費者が憧れる家

いかがでしょうか。
感覚としては、おなじようにデザイン性の高い住まいだったとしても、消費者から発せられる言葉として「お洒落」「デザイン性が高い」といった様式をそのまま褒めるような表現よりも、「素敵」「いいな」という心の感情が言語化された言葉が発せられた時という感じでしょうか。

この心を動かす「デザイン」というものが非常にポイントだと感じます。
同じ商圏にお洒落なデザインの住まいを提供する工務店は数あれど、「心をうごかすデザイン」が出来る工務店は少ないはず。

結局デザインするのも人なのでソフト面じゃん!ってツッコミもありそうですね。デザインってセンスだから、無理じゃん!って思われる方もいるかと思います。

ですが、デザインは模倣・オマージュ・規則性など漠然ととらえずに要素で考えると意外と前進出来たりするものです。つまり「心をうごかすデザイン」のインプットの量と質の鍛錬が重要ですね。

デザインに関しては、数をこなす工務店の方が画一的になりやすく、デザインとどこまで向き合うか?という社内合意形成は取りずらいのではないでしょうか?

今回の答え

ここまで、長々と差別化戦略について述べてきましたが、大事なことは自社目線で行う差別化は、消費者からみると同質化されている場合もある。と理解し、
真の差別化を行うのであれば、①ソフト面における情報発信の工夫、②心をうごかすデザイン
と、より顧客の心理に近いフェーズで考えることが重要であり、それこそが簡単には同質化されない御社の魅力になると思います。ご参考までに。